• 令和5年度の租税滞納状況、新規発生滞納額は7,997億円と前年度より+11.1%増加。徴収決定済額が過去最高となったことが一因。
  • 滞納整理の一環である原告訴訟は139件を提起。滞納法人から代表者への不動産売却が債権者を害する行為であるとして詐害行為取消訴訟を提起し、国側が勝訴した事例など。

国税庁は8月29日、「令和5年度租税滞納状況の概要」を公表した。令和5年度における新規発生滞納額は7,997億円(+11.1%)と、減少に転じていた前年度より増加した。国税庁によると、徴収決定済額(申告などにより課税されたものの額)が79兆6,531億円と庁発足以来、過去最高となったことが一因であるとしている。また、滞納発生割合は「1.0%」で、前年度に引き続き低水準で推移した。

滞納整理済額は7,670億円となっており、前年度と比較して566億円(+8.0%)増加している。その一方で、滞納残高は9,276億円と、整理済額を上回る新規滞納(7,997億円)が発生していることにより、前年度に比べて328億円(+3.7%)増加した。

また、国税庁では、通常の滞納整理の手法では処理進展が図られない事案について、訴訟手法を活用した滞納整理にも取り組んでいる。令和5年度においては139件を提起しており、終結したのは141件であった。終結件数のうち、国が勝訴したのは11件、取り下げが7件、その他(勝訴・敗訴の区分する実績が無いようなものなど)は123件となっており、敗訴(一部敗訴含む)や、和解は0件であった。事例としては、滞納法人から代表者への不動産売却が、債権者(国)を害する行為(不動産の金銭への換価により隠匿等の処分をするおそれを現に生じさせる行為)に該当するとして、詐害行為取消訴訟を提起したものなどがあった(国側の勝訴)。

このほか、国税庁は、財産等の隠ぺい等により国税の徴収を免れようとする悪質な事案に対しては、滞納処分免脱罪の告発を行っている。令和5年度においては、8件(16人員)の事案を告発し、このうち11人員が起訴された。刑が確定したのは10人員で、東京局では滞納処分の執行を免れるため、取引先に対し、工事代金等を代表者の息子等名義の預金口座に振込入金させて財産を隠ぺいした行為について告発した事例などがあった。裁判所は、滞納法人は不起訴とし、代表者には懲役1年執行猶予3年(罰金30万円の併科)、代表者の妻に懲役10か月執行猶予3年(罰金20万円の併科)の有罪判決を下している。