• 現場所長による横領行為が国税通則法68条1項の適用上、請求人の行為と同視できるか争われた事案(関裁(法・諸)令5第14号)。
  • 審判所、管理・監督を適切に行っていれば、現場所長の横領行為を把握することは十分可能と判断。現場所長の横領行為は請求人の行為として同視でき、重加算税の賦課決定処分は適法。

本件は、現場所長による横領行為が国税通則法68条1項(重加算税)の適用上、総合建設業を営む法人である請求人の行為と同視できるか争われた事案である。現場所長は、自動販売機設置手数料を現場所長名義の預金口座に振り込むよう自動販売機設置業者に対して依頼し、自動販売機設置手数料などを横領したもの。請求人は、現場所長による横領行為は原処分庁の税務調査において初めて知らされたことであり、現場所長が故意に行った横領行為を請求人において把握することは困難であることから、現場所長の行為は、請求人の行為と同視することはできないと主張した。

審判所は、納税者が法人である場合、法人の従業員など納税者以外の者が隠蔽又は仮装する行為を行った場合であっても、それが納税者本人の行為と同視することができる場合には、納税者本人に対して重加算税を賦課できると解するのが相当であるとした。そして、従業員の行為を納税者本人の行為と同視できるか否かについては、①その従業員の地位・権限、②その従業員の行為態様、③その従業員に対する管理・監督の程度等を総合考慮して判断するとした。

審判所は、現場所長は外注費減額金の一部を現場所長名義の預金口座へ振り込ませる際、自身が個人事業主であるかのような請求書を作成したほか、自動販売機の設置手数料を現場所長名義の預金口座に振り込ませており、これらの行為は、隠蔽仮装行為であるとした。その上で、審判所は、現場所長は下請業者及び自動販売機設置業者との取引関係の維持に関して一使用人としての権限を越えて相当程度強い影響力を有しており、その権限行為が適正にされているかを請求人において相当の注意をもって監視しておくべきであったと指摘。請求人の現場においては、現場所長に手続を一任されていたわけではなく、建築工事部の部長職による管理・監督が予定されていたことを踏まえると、現場巡回や打ち合わせ議事録の確認といった管理・監督を適切にしていれば、現場所長の横領行為を把握することは十分可能と判断。以上のことから、審判所は、現場所長の横領行為は請求人の行為として同視できるとした。