• 東京地裁、配当所得は外国法人の株主に対する剰余金の配当に係るものであり、資産の譲渡に係る所得には当たらず、非課税所得に該当しないと判断(令和6年3月7日、令和5年(行ウ)128号)。

本件は、原告が単独株主であった外国法人に係る剰余金配当手続により生じた所得について、非課税所得に該当するか争われた事案である。原告は、債権者申立てにより破産手続開始決定を受けており、単独株主であった外国法人の取締役を退任。その後、同社の全ての株式を取得した上で取締役に就任した破産管財人により、同破産手続における換価手続の一環として、原告に剰余金の配当が行われていた。税務署が、これらに係る所得に対して所得税等の決定処分等を行ったところ、原告は、所得税法9条1項10号は、所得を「強制換価手続による資産の譲渡による所得」と「これに類するものとして政令で定める所得」の2つにつき非課税所得に該当すると規定しており、破産の強制換価手続における破産財団の配当資金の組成等に向けての柔軟かつ合理的な処分は全て「資産の譲渡」に該当するから、本件配当は非課税に該当する等と主張した。

裁判所は、所得税法9条1項10号及び所得税法施行令26条は、①資力を喪失して債務を弁済することが著しく困難である場合における国税通則法2条10号に規定する強制換価手続(破産手続を含む)による資産の譲渡による所得及び②資力を喪失して債務を弁済することが著しく困難であり、かつ、同号に規定する強制換価手続の執行が避けられないと認められる場合における資産の譲渡による所得で、その譲渡に係る対価が当該債務の弁済に充てられたものについては所得税を課さない旨規定しているところ、所得税を課さないこととされるのは資産の譲渡による所得のみであると解するのが相当であるとした。その上で、本件配当に係る所得については、各外国法人の株主に対する剰余金の配当に係るものであり、資産の譲渡に係る所得には当たらないとして非課税所得に該当しないとの判断を示し、原告の請求を棄却した。

また、原告は、仮に非課税所得に該当しないとしても破産管財人が源泉徴収義務を負うものであると主張したが、裁判所は、配当は外国法人が単独株主に対して国外において発行した株式に係る配当をしたものであり、「国内において」された配当とはいえず、破産管財人は「国内において所得税法24条1項に規定する配当等の支払をする者」には該当しないことから源泉徴収義務はないと判断した。