• 東京高裁、太陽光発電を行うための各取組の「事業」該当性が争われた事案で、事業を反復継続的に遂行するために必要な客観的な基礎を完全に欠いており、「事業」を開始したとはいえないとの地裁判決を支持(令和6年10月9日判決)。

控訴人が取締役を務める関係会社2社は、E社を介して太陽光発電を行っていたところ、控訴人自身も個人として太陽光発電を行うため、E社との間で、太陽光発電に係る土地の取得、設備の設置、発電、売電に必要な各種の契約を締結し、準備を進めていた(本件各取組)。

しかし、平成30年頃からE社の代表取締役A氏と連絡が取れなくなり、E社は平成31年に破産手続が開始され、A氏は令和3年、架空の太陽光パネルの設置を持ちかけて工事代金を騙し取ったとの嫌疑により逮捕され、その後公訴を提起された。

一審の東京地裁は、本件各取組は、これを反復継続的に遂行するために必要な客観的な基礎を完全に欠いていたとして、「事業」に該当せず、設備資金に係る借入金の支払利息、損害賠償請求権に係る貸倒引当金繰入額は必要経費に算入できないとの判断を下していた。

控訴人は、①みずほ銀行が物的担保も求めずに控訴人に8800万円もの多額の融資をしたことは、同銀行が本件各取組を「事業」と判断したことの証左といえること、②本件各取組前に、関係会社2社がE社に依頼して売電収入を得ているところ、K案件についても控訴人が他者より先に土地についての対抗要件を備えていれば継続的に売電収入を得ていたはずであり、物的設備の取得は事業遂行上の行為の一つにすぎないから、物的設備を取得することができなかったからといって、「事業」全体の実体や基礎がなくなることにはならないことなどを追加で主張した。

これに対し東京高裁は、①については、そもそも、みずほ銀行の主観的な判断が、本件各取組の「事業」該当性を根拠づけるものとはいえない、②については、控訴人は、K案件を含めて太陽光発電に必要不可欠な本件設備等を一切取得することができず、それによる売電ができなかったのみならず、控訴人が支払った本件借入利息等やE社への支出額も、控訴人がA氏にだまされた結果支出したものであって、これらの支出は本件各設備等による売電に対し実質的に全く寄与することがなかったのであるから、本件各取組が、太陽光発電による売電を反復継続的に遂行するために必要な客観的な基礎を完全に欠いていたとする原判決を支持し、控訴を棄却した。