• 令和5事務年度における法人税の調査件数は減少も、追徴税額は3,197億円と平成22事務年度以降では過去2番目の金額。
  • 税務署所管法人における調査件数5万7,001件のうち、AIの活用により申告漏れの可能性が高いと判断されて調査を行ったのは3万5,472件と全体の6割強。

国税庁は11月28日、「令和5事務年度 法人税等の調査事績の概要」を公表した。法人税等の実地調査の件数は5万9千件と、前事務年度より5.4%減少した一方で、申告漏れ所得金額は9,741億円(対前事務年度比+24.9%)と増加した。追徴税額は3,197億円(同▲0.9%)であり、前事務年度から微減したものの平成22事務年度以降では2番目に高水準であった。調査1件当たりの追徴税額についても、549万7千円(同+4.9%)と平成22事務年度以降で過去3番目に高い金額となっている。同庁は、調査件数の減少について、優先的に調査を行うべき事案の中に調査日数を要するものがあったとしているが、申告漏れ所得金額や追徴税額は高水準で保たれていることから、実地調査は的確かつ順調に実施されているものとした。なお、法人税等の実調率は「1.7%」(税務署所管法人1.7%、調査課所管法人4.3%)となっており、調査1件当たりの平均日数は16.1日であった。

納税者に対して自発的な申告内容の見直しを要請する「簡易な接触」は、7万件実施し、その申告漏れ所得金額は92億円、追徴税額は92億円であった。なお、申告漏れ所得金額については、事績を公表した平成29事務年度以降で最高額となった。

また、国税庁が主要な取り組みの一つとしている消費税還付申告法人に対しては、5,425件の実地調査を実施している。調査による追徴税額は390億円で、事績を公表した平成18事務年度以降で2番目に高額となり、不正計算に係る追徴税額は81億円、調査1件当たりの追徴税額は719万7千円であった。

このほか、国税庁では、AIを活用した予測モデルにより調査必要度の高い法人を絞り込んで、調査を実施している。税務署所管法人における調査件数5万7,001件のうち、AIの活用により申告漏れの可能性が高いと判断されて調査を行ったのは3万5,472件であり、全体の6割強を占めた。また、追徴税額は1,665億円と前事務年度と比べ193億円増加しており、対前年比で、追徴税額全体(2,110億円)の8割近くを占めた。国税庁は、予測モデルの精度向上と、調査選定の場面での判定結果の有効活用が進んでいるとした。