• 令和5事務年度の所得税調査、申告漏れ所得金額(9,964億円)と追徴税額の総額(1,398億円)が過去最高を記録。
  • インボイス制度の導入に伴い、簡易な接触件数が増加。添付書類漏れや単純な計算誤りが散見される。

国税庁が11月29日に公表した「令和5事務年度 所得税及び消費税調査事績の概要」によると、所得税の申告漏れ所得金額の総額9,964億円(前事務年度9,041億円)及び追徴税額の総額1,398億円(同1,368億円)が過去最高を記録したことが分かった。実地調査の件数は4万7,528件(同4万6,306件)で、このうち高額・悪質な不正計算が見込まれる事案を対象に深度ある調査を行う「特別・一般調査」は3万7,092件(同3万5,751件)、資料情報や申告内容の分析の結果、申告漏れ等が見込まれる個人を対象に臨場して短期間で調査を行う「着眼調査」は1万436件(同1万555件)であった。また、原則として納税者宅等に臨場することなく、文書、電話連絡又は来署依頼による面接を行い、申告内容を是正する「簡易な接触」については、55万7,549件(同59万1,517件)となっている。国税庁は、申告漏れ所得金額と追徴税額が過去最高になった一因として、申告漏れの可能性が高い納税者等を判定するAIを活用した予測モデルにより、調査事務の効率化・高度化に取り組んだことに加えて、納税者のコンプライアンスリスクに応じた最適な接触方法を選択した結果によるものとしている。

譲渡所得の調査については、1万6,715件の調査を実施し、このうち申告漏れ等の非違があったのは1万3,341件、申告漏れ所得金額は1,460億円となっている。大阪局では、金地金の法定調書の提出基準以下の譲渡を繰り返し、所得税を免れようとした女性に対して、約2,800万円(重加算税有)を追徴課税した事案があった。

また、個人事業者に対する消費税の調査等については追徴税額の総額が423億円で、過去最高となった。実地調査は2万6,576件(前事務年度2万5,513件)実施しており、簡易な接触は9万3,919件(同6万8,472件)と大幅に増加している。国税庁は、インボイス制度の導入によって申告件数も増加しており、添付書類漏れや単純な計算誤りが増えたことで簡易な接触件数も増加したとしている。なお、国税庁の主要な取組みの一つである無申告者に対する調査状況を見ると、消費税無申告者に対しては7,827件の実地調査を実施した。追徴税額の総額は214億円で過去最高となり、1件当たりの追徴税額も、過去最高であった前事務年度(260万円)を上回る274万円となっている。