• 東京地裁、一時所得の総収入金額に算入すべき、ふるさと納税の返礼品の経済的利益の額を、地方公共団体による調達価格とするのは合理的と判断(令和6年12月11日判決)。

本件は、原告が地方団体から取得したふるさと納税の返礼品について、一時所得の計算上総収入金額に算入すべき金額(経済的利益の額)が争われた事案である。

東京地裁はまず、所得税法36条1項における「価額」とは、取得時における客観的価値、すなわち、不特定多数の当事者間で自由な取引が行われた場合において通常成立すると認められる価額をいうものとの解釈を示した。その上で、返礼品の調達価格は、特別な関係ないしは動機を持たない地方団体と調達事業者との間において成立した取引価格であるといえるから、「不特定多数の当事者間で自由な取引が行われた場合において通常成立すると認められる価額」と評価することができるとし、調達価格を返礼品に係る経済的利益の価額として一時所得の総収入金額に算入すべき金額とするのは合理的であると結論づけた。

原告は、不特定多数の当事者間における自由な取引とは、価格交渉力を有する一般の事業者が行う取引を指し、そのような価格交渉力を有しない地方団体が返礼品を調達するために支出した金額を時価とするのは「価額」の定義に合致しないと主張した。

これに対し東京地裁は、「地方団体においては、種々の検討や調達事業者等との折衝等を経て、返礼品を選定、調達しているものと考えられ、調達事業者においても、自らの納品する返礼品について寄附金が多く集まれば、その分地方団体との取引に基づく代金を得ることができると考えられ、成立した取引価格についても、自由競争原理が働いているとみることができる」として、原告の主張を斥けた。

また原告は、「ふるさと納税をした納税者は、地方団体が返礼品の金額をいくらと評価しているのか知り得ないから、自らの経済的利益の価額を把握し得ず、課税要件の明確化及び納税者の予測可能性の観点から不当」などとも主張したが、東京地裁は、「申告納税方式の下では、納税者が返礼品に係る経済的利益の価額を把握した上で申告をすべきものであり、納税者が調達価格を把握することができない事情がある場合には、調達価格に変わる根拠に基づいて返礼品に係る経済的利益の価額を算出したとしても、その根拠が合理的であると認められる限り認められる」などとして、この主張も斥けている。