• 土地の借地権を有すると主張する請求人に対し、原処分庁が差押通知をせずに公売公告処分を行ったことが違法であるか争われた事案(令和6年9月25日裁決)。
  • 審判所、請求人は借地権登記をしなかったものの、所有権移転登記を行っており、対抗要件を具備。差押通知をせず、公売公告の記載誤りがあることから原処分は違法。

本事案は、滞納会社が所有していた土地について、土地の借地権を有すると主張する請求人が、原処分庁が事前手続である差押通知をせずに公売公告処分を行ったことは違法であるとして処分の取消しを求めたもの。請求人は、公売の実施により借地権を喪失するため、自己の利益が侵害されることから不服申立てをすることができる者に該当し、原処分庁が差押通知を請求人に行わなかった公売公告処分は違法であると主張。一方で原処分庁は、請求人は土地に借地権の登記をしていなかったとしたほか、土地上に請求人名義で登記されていた不動産は、滅失登記がされているが、その後、掲示等による対抗措置(借地借家法10条2項)をしていないことから、借地権について対抗要件を具備していないと主張した。

審判所は、徴収法50条(第三者の権利の目的となっている財産の差押換)及び55条(質権者等に対する差押えの通知)の趣旨等に鑑みると、差押換えを請求できる機会を与えられなかった者が差押通知を受けるべき者に当たる場合には、公売公告処分の取消しを求める不服申立適格が認められると解するのが相当であるとした。本件については、請求人は土地に係る借地権の登記をしていなかったものの、各建物につき相続を原因とする所有権移転登記を行っており、その借地権を国に対抗できることからすると(民法605条、借地借家法10条等)、請求人は、徴収法50条の差押換請求をすることができる第三者に当たり、かつ徴収法55条1号の賃借権を有する者に該当し、公売公告処分について不服申立てをすることができる者に該当するとの判断を示した。

その上で、本件公売公告処分については、原処分庁は請求人に対して公売公告処分に先立ち差押通知をしていなかったことから、取消し得べき瑕疵が認められることに加え、本件公売公告処分には、買受人が引き受けるべき公売財産上の財産上の負担である請求人の借地権という「公売に関し重要と認められる事項」(徴収法95条1項9号)の記載が漏れていることから、本件公売公告処分には取消し得べき瑕疵があるとの判断を示し、同処分の全部を取り消した。