• 幼稚園の園長が退職金を支給された後も勤務を継続したため、原処分庁から給与所得とされた事案で裁決(平成26年12月1日裁決、全部取消し)。
  • 退職所得か否かは勤務関係の終了等、形式的要件を満たす必要あり。
  • ただし、勤務内容が大幅に変更される場合など、退職所得と同一に取り扱うことができるケースも。

今回の事案は、幼稚園を運営する学校法人である請求人の理事長兼幼稚園の園長に対して退職金を支払ったが、原処分庁が退職に当たる事実はないため給与所得(賞与)に該当するとして源泉徴収に係る所得税の納税告知処分等を行ったもの。請求人は、当該金員は園長の退職という事実に基因して支払ったものであり、再雇用後の勤務関係は単なる従前の勤務関係の延長とみることはできないと主張していた。

審判所は、金員が所得税法30条1項の「退職手当、一時恩給その他の退職により一時に受ける給与」に当たるためには、①勤務関係の終了という事実によって初めて給付されること、②従来の継続的な勤務に対する報償ないしその間の労務の対価の一部の後払の性質を有すること、③一時金として支払われることの要件を備えることが必要であると指摘。また、同項の「これらの性質を有する給与」に当たるためには、形式的には前述の要件のすべてを満たしていなくても、実質的にみてこれらの要件の要求することに適合すれば、課税上、「退職により一時に受ける給与」と同一に取り扱うことは相当であるとした。

具体的には、勤務関係の性質、内容、労働条件等に重大な変動があって、形式的には継続している勤務関係が実質的には単なる従前の勤務関係の延長とは認められないなどの特別の事実関係があることを要するとしている。

これを本件についてみると、審判所は再雇用されて嘱託職員として幼稚園の園長にとどまり、理事長としての地位も有していることから勤務関係の終了があったものと認めることはできないが、実質的には園長としての職務のほとんどを引き継ぐなど、職務内容は量的にも質的にも大幅に軽減され、基本給の額が減額されるなど労働条件も大きく変動していることから、単なる従前の勤務関係の延長とみることはできない特別の事実があると認められると判断。所得税法30条1項の「退職手当、一時恩給その他の退職により一時に受ける給与」の「これらの性質を有する給与」と認められることから、退職所得に該当するとして原処分庁の処分を全部取り消した。