- 売掛金認容等処理をした金額について損金の額に算入できるか否かで争われた事案で裁決(平成26年7月25日、棄却)。
- 審判所は、請求人内部の意思決定された事実を示しているにすぎない取締役会の決定をもって売掛金認容等処理をした金額は損金算入できないと判断。
今回の事案は、請求人が法人税の確定申告において売掛金等の債権の残高に関して発生原因の解明が不能であることが確認されたなどとして損金の額に算入したが、原処分庁は法人税法22条(各事業年度の所得の金額の計算)3項各号に掲げる額のいずれにも該当しないため損金の額に算入できないとして更正処分を行ったもの。請求人は、前期損益修正の損失を認識したものであり損金の額に算入すべきであるなどと主張していた。
審判所は、請求人は各事業年度前の事業年度において、売掛金勘定等不一致を把握したところ、請求人の総勘定元帳の残高に誤りがある、あるいは当該残高が正しい金額であるとの確認ができないとし、それぞれ損失を計上する会計処理をしたもの。しかし、当該会計処理をした各事業年度の所得金額の計算においては当該会計処理に係る損失の計上額をいずれも損金の額に算入せず、その後、各事業年度において、これ以上社内調査をしても本件売掛金勘定等不一致が発生した原因について解明できないことが確認されたと判断した上で、取締役会における損金の額に算入する旨の決定を経て、本件売掛金容認等処理をしたものと認められるとした。
以上を踏まえ、売掛金認容等処理に関しては、前期損益修正通達(法基通2-2-16)に定める当該事業年度前の各事業年度においてその収益の額を益金の額に算入した取引について契約の解除又は取消し、値引き、返品等の事実が生じたものではないことは明らかであると指摘。また、法人税法上、法人が有する金銭債権の帳簿価額を減額した金額を損金の額に算入することは、貸倒損失及び評価損のいずれにおいても、その要件事実が生じた場合に限られると解されるところ、本件売掛金認容等処理がこの場合に該当しないと判断。法人税法における金銭債権に係る貸倒損失及び評価損の取扱いとは相容れないにもかかわらず、請求人が売掛金勘定等不一致の発生原因を解明できないという認識を得るに至ったことや内部の意思決定された事実を示しているにすぎない取締役会の決定をもって売掛金認容等処理をした金額を損金の額に算入することは認められないとした。