• 全国国税局課税部長会議で、“超富裕層”をターゲットにした専門調査チームの取組み状況を確認。
  • 国税庁、検証を踏まえ超富裕層への調査に関し選定基準などを内容とした試行通達を策定・運用へ。
  • 東京・名古屋・大阪の3局で実施されている超富裕層に対する専門調査の全国的波及も視野に。

国税庁内で今年5月25日・26日に開催された「全国国税局課税(第一・第二)部長会議」の内容が本誌取材により明らかとなった。主だったところをみると、資産課税課当面の課題としては、相続税の課税ベース拡大について、今年7月1日の路線価公開後、これまで以上に納税者からの相談などの増加が見込まれることを踏まえ、相談体制の整備を図ることが確認された。

また、今年7月1日から適用が始まる「国外転出時課税制度」に関しては、1億円以上の有価証券などを所有する適用対象者が申告をせずに出国したケースなどを念頭に、事後的な執行体制の整備に向けた検討を進めるとされた。

納税者にとって特に関心が強い税務調査事務に関しては、平成26事務年度における課税部重点課題である①富裕層、②無申告、③国際化への対応、④消費税の適正課税の確保に対する国税当局の取り組み状況が確認された。

この4つの重点課題のうち、富裕層に関し国税当局では、税務署で管理する一般的な富裕層(大口の不動産取得者や高額な譲渡を行った者など)に対する税務調査に加え、平成26事務年度から情報収集機能を一段と強化することなどを目的として、特に資産規模が大きい“超富裕層”をターゲットにした専門のPT(プロジェクトチーム)を東京・名古屋・大阪の3つの国税局に立ち上げている。

今回の課税部長会議では、この平成26事務年度から始まった超富裕層PTに関する取組み状況も確認された。具体的にみると、平成26事務年度における超富裕層PTの活動に関し、収集すべき情報の内容や税務調査に有効な情報などについての検証が行われている。この検証を踏まえ、国税庁は、超富裕層調査に関し、「超富裕層の選定基準、管理の区分、情報の種類、調査企画についての体制など」を内容とした試行通達(予め期限が限定された通達)を策定する。国税庁は、この試行通達の内容に関する取組みを平成27事務年度(平成27年7月)から1年程度試行したうえで、東京・名古屋・大阪の3局で実施されている超富裕層をターゲットにした専門の調査体制を全国的な取り組みにつなげていく方針だ。