• 納税通知書の“郵便事故”を理由に納税者が地方公共団体を訴えていた事件で納税者敗訴が相次ぐ。
  • 地裁、不達が相当数発生した証拠がないことなどを指摘し、送達の推定(地法20④)を覆すには足りないと判断(1つめの事件)。
  • 送達の立証義務は徴収者が負うべき旨を納税者が主張も、地裁は採用せず(2つめの事件)。

普通郵便で送付される地方税の納税通知書は、通常到達すべきであった時に送達があったものと推定される(地法20④)。今回紹介する2つの事件は、納税通知書の“郵便事故”を理由に、原告が地方公共団体に対し処分の取消しなどを請求した訴訟だ。

1つめの事件は、非居住者である原告が指定した納税管理人の住所に納税通知書が到達しなかったことを理由に、原告がY区に対し納税通知書の送付が前提となる督促処分の取消しを求めたもの。Y区は平成25年8月、納税通知書を納税管理人の住所に普通郵便で発送した。これに対し原告は、本件訴訟のなかで納税通知書の送達を受けていないと主張した。その理由として原告は、インターネットを通じて注文した書籍が配達されなかったことがあったことなどを指摘したうえで、本件納税通知書に関し送達があった旨の推定(地法20④)は覆されると主張した。これに対し裁判所は、書籍が配達されなかったという出来事のほかに納税管理人の住所について郵便物などの不達(誤配など)が相当数発生していたと認めるに足りる証拠がないなどと指摘した。そのうえで、裁判所は、原告が主張する事情では地方税法20条4項の推定を覆すには足りないと判断し、原告の請求を斥けた(東京地裁平成27年4月28日判決)。

2つめの事件は、納税通知書の不達で期限内納付ができず延滞税が発生したとして、原告がY市に対し延滞税の還付を請求したもの。Y市は平成25年6月、原告の住所に納税通知書を普通郵便で発送した。これに対し原告は、近年郵便物の不配が現に発生していることは新聞報道などで明らかであると指摘し、仮に納税通知書が送達されていれば原告が納税しない理由はないため、納税通知書は送達されていないと主張。また、原告は、送達の立証義務は徴収者が負うべきと主張した。これに対し裁判所は、原告が主張する事情は本件納税通知書に関し郵便事故が発生したことをうかがわせるほどのものとはいえないと指摘。また、立証義務は徴収者が負うべき旨の主張に対し裁判所は、地方税法20条4項を含む法の趣旨に反するとしたうえで、原告の請求を斥けた(同平成27年4月23日判決)。