• 国内事業者が国外事業者から提供されたソフトウェア等を国内でネット販売する取引は「国外事業者から国内事業者に対する著作権の貸付け又は譲渡」「国内事業者から国内消費者に対するソフトウェアのネット販売」に分解され、両者は別取引と認識。よって当該取引は「国境を越える電気通信利用役務」に該当せず。

国内事業者によるソフトウェア等のインターネット販売はごく一般的に行われているが、当該ソフトウェア等の著作権は国外事業者が所有していることが珍しくない。すなわち、「国内事業者がソフトウェア等を国内の消費者に対しインターネット等で販売する」という取引の前提には「国内事業者が、国外事業者から(ソフトウェア等に係る)著作権の貸付けや譲渡を受ける」という取引が存在することになる。この2つの取引を“一連の取引”と見た場合に問題となり得るのが、国境を越えた役務提供に係る消費税の課税問題だ。

平成27年度税制改正では、インターネットを介して行われるソフトウェア等の販売を「電気通信利用役務の提供」と位置付け、その役務の提供が消費税の課税対象となる国内取引に該当するか否かの判定基準を、従来の「役務の提供を行う者の役務の提供に係る事務所等の所在地」から「役務の提供を受ける者の住所等」へと変更している(消法2条①八の三、4条③三)。

「国内事業者がソフトウェア等を国内の消費者に対しインターネット等で販売する」行為が電気通信利用役務の提供に該当することは明らかであり、この取引だけを見れば、「役務の提供を受ける者の住所等」は国内にあるため、当該取引は国内取引となる。ただ、「国内事業者が、国外事業者から(ソフトウェア等に係る)著作権等の貸付けや譲渡を受ける」取引までを一連の取引と見た場合、当該国内事業者は、最終的に「電気通信利用役務」の提供を行っていることから、その前提となる「国外事業者からの著作権等の貸付けや譲渡」も電気通信利用役務の一部を構成し、一連の取引が「国境を越えた役務提供」に見えなくもない。

しかし、あくまでこれは独立した「著作権の貸付け、譲渡」等であり、電気通信利用役務の提供を構成しないので留意したい。したがって、当該取引が国内取引か国外取引かの判定は従来通り「著作権を有するのが国外に住所のある者か否か」により行われることになる。本事例の場合、著作権を有するのは国外事業者であることから、当該著作権の貸付、譲渡は「国外取引」となり、消費税の課税対象外となる。