• 請求人が船内で行う荷役作業が消費税法上の事業に当たるか否かが争われた事案で全部取消し裁決。
  • 審判所、請求人が役務提供先から指揮監督を受けていたことなどを認定したうえで、請求人が受け取る報酬を給与と判断。請求人の役務提供は消費税法上の事業に該当せず(平成27年1月8日裁決)。

本裁決事例は、請求人が行う役務提供(貨物船内で行う荷役作業)が消費税法上の事業であるか否かが問題となった事案だ。

事実関係をみると、請求人は、その2人の息子とともに、A社が指定する作業現場(貨物船内)で貨物を固定する作業を行うことでA社から1日1人当たり22,000円の報酬を受け取っていた。この報酬に関する税務調査を行った原処分庁は、請求人は2人の息子を使用して請負による役務の提供を行う事業者であると判断。請求人は、原処分庁の判断に従うかたちで、A社からの報酬について消費税の申告を行った。

その後、請求人は、請求人は日雇労働者であり事業者ではないから消費税の納税義務者には当たらないとして、消費税の還付を求める更正の請求を行った。しかし、原処分庁は、更正の請求には理由がない旨を請求人に通知した。これを不服とする請求人は、審査請求のなかで、請求人は日当で作業に従事する日雇労働者であるためA社からの報酬は給与であると主張した。これに対し原処分庁は、①請求人らの役務提供は他人の代替ができること、②請求人らはA社の指揮監督を受けていないこと、③請求人らは道具代などを自ら負担していたことなどを指摘し、請求人による提供役務は消費税法上の事業であると主張した。

国税不審判所は、まず、請求人らのうちA社の作業に従事する者が事前の契約により特定されているため、請求人らがA社に対し提供する役務は他人の代替ができないものであると認定した。

次に、審判所は、請求人らが作業を行うときに1名はA社の従業員が参加し、その従業員が責任者となって作業を監督していた点などから、役務の提供にあたり請求人らは事業者(A社)の指揮監督を受けていたと認定。さらに、審判所は、作業に関する材料や道具などのうちその支出額の大部分を占める鋼材などの材料をA社が負担していた点などから、請求人らはその作業に関する材料や道具などをA社から供与されていたと認めるべきであるとした。そのうえで、審判所は、請求人はA社に雇用された給与所得者である(消費税法上の事業者に該当しない)と判断し、消費税に係る原処分を取り消した。