• 審判所、診療所を営む納税者が支出した接待交際費のうち、予防接種の実施先である学校法人への贈答品の購入費を必要経費と判断。更正処分の一部を取消す(平成27年4月13日裁決)。
  •  一方、給与所得を得ている勤務先病院への贈答品の購入費は納税者の診療所に係る事業所得の必要経費に該当しないと判断。

今回紹介する裁決事例は、医師として複数の病院に勤務するとともに、自らの診療所を営む納税者が支出した接待交際費(贈答品の購入費など)が納税者の診療所に係る事業所得の必要経費に該当するか否かが問題となったものだ。

納税者は、総勘定元帳に計上された接待交際費の金額の合計額のうち、一定の金額を自主的に必要経費から除外したうえで、残りの部分を接待交際費として必要経費に算入していた。これに対し税務署は、贈答品の購入費などについて、事業所得を生ずべき業務の遂行上必要な費用ではないと判断したうえで、必要経費に算入できないとする更正処分を行った。これを不服とする納税者は、接待交際費に係る接待の目的は同業者との意見交換や関係先との取引の円滑化などであり、事業の遂行上必要な費用であると主張して、審判所に対し所得税更正処分等の取り消しを請求した。

国税不服審判所は、まず、接待交際費が事業と直接関係し、かつ、事業の遂行上必要なものであったと認められるか否かは接待交際費に係る個々の支出ごとに判断すべきとした。

予防接種の実施先である学校法人への贈答品の購入費について審判所は、納税者がその学校法人における予防接種を行うことで、納税者が営む診療所に係る事業収入を得ている点を指摘。また、審判所は、学校法人への贈答品の購入費は予防接種取引に係る謝礼またはその取引関係の維持のためのものとみるのが相当であると指摘した。そのうえで、審判所は、学校法人への贈答品の購入費は納税者が営む診療所の事業と直接関係し、かつ、その事業の遂行上必要なものであったと認めることができるため必要経費に算入できると判断した。

一方で、給与所得を得ている勤務先病院への贈答品について審判所は、勤務先病院およびその職員などとの関係の円滑化を図るための支出であると指摘。審判所は、勤務先病院への贈答品の購入費は納税者が営む診療所の事業と直接関係し、かつ、その事業の遂行上必要なものであったと認めることはできないため、必要経費には算入できないと判断した。