- 金融庁、平成28年度税制改正で「海外の組織体(パートナーシップ等)を通じた投資の円滑化に資するための措置」を要望。
- 米国デラウェア州のLPSが「法人」に該当するとの最高裁判決が背景の1つにある可能性。企業や実務家の間ではパートナーシップに対する課税の増加を懸念する声が上がるも、実現には低くないハードル。
7月17日、米国デラウェア州のLPSが日本の租税法上「法人」に該当するか否かが争点となった裁判で、最高裁判決は当該LPSが日本の租税法上「法人」に該当するとの判決を下し、大きな話題を呼んだところだ。
最高裁は、法人への該当性の判断を、①外国事業体が外国法令で日本法上の法人に相当する法的地位を付与されていることまたは付与されていないことが疑義のない程度に明白であるか否かを検討し、これができない場合には、②外国事業体が権利義務の帰属主体であると認められるか否か(外国事業体が自ら法律行為の当事者となることができ、かつ、その法律効果がその事業体に帰属すると認められるか否か)を検討する、という2段階で行うとの考え方を示している。
最高裁判決をきっかけに、企業や実務家の間では「パートナーシップに対する課税が増えるのではないか」との懸念が広がっている。また、デラウェアのLPSが「組合」に当たるとの前提で税務処理を行ったものの税務調査で指摘を受けなかったケースでは、今後の課税リスクを気にする声も聞かれる。
こうしたなか金融庁は、平成28年度税制改正要望において、「海外の組織体(パートナーシップ等)を通じた投資の円滑化に資するための措置」を要望している。パートナーシップ税制に関する改正要望は以前から金融庁に届いていた模様だが、今回の税制改正要望の背景の1つに上記最高裁判決があるのは間違いないだろう。最高裁判決により示された判断の枠組みを変えるには、もはや「立法」しかないからだ。
最高裁判決をきっかけに税法が改正された事例としては、例えば長崎年金事件の最高裁判決(平成20年(行ヒ)第16号、平成22年7月6日判決)を踏まえた所得税法施行令の改正があるが、これは国が敗訴した事案であるということが大きな要因といえそうだ。
一方、今回の最高裁判決は国が勝訴した事案であるだけに、税制改正へのハードルは低くはなさそうだ。