• 海外に住民票を移した滞納者(原告)に対し、地方公共団体(被告)が行った「公示送達」による督促状の送付および財産差押えを適法と判断(東京地裁平成27年6月23日判決)。
  • 公示送達前に、転出届記載の携帯電話番号への電話や親族への住所地照会などを行うことは通常必要とされる調査とは認められず。

今回の裁判事案で問題となったのは、海外に住民票を移した納税者(原告)に対し地方公共団体である被告が「公示送達」の方法により行った督促状の送付および財産の差押えが違法なものであるか否かだ。

本件で問題となった「公示送達」とは、督促状などの送達を受けるべき者の住所などが明らかでない場合に、督促状などをいつでも送達を受けるべき者に交付する旨を地方公共団体の掲示場に掲示すること。公示送達がなされた督促状は、掲示日から7日を経過したときに送達があったものとみなされる(地方税法20条の2)。

被告は、住民税を滞納していた納税者に対し督促状を送付する際に、①住民基本台帳上で納税者の転出先の住所が海外とされていること、②納税管理人が選任されていないことを確認。被告は、督促状の送達を受けるべき者の住所などが明らかでないと判断したうえで、納税者に対する督促状の送付を公示送達により行った。

公示送達後に被告は、海外から帰国した納税者がもつ国内金融機関の預金口座約34万円に対し差押え処分を行ったうえで、納税者の国内住所宛てに差押調書を送達した。これを不服とする納税者は、本件訴訟のなかで、被告は海外にある納税者の住所を確認することができた点を指摘したうえで、公示送達により行われた督促状の送付は違法であると主張した。具体的な住所確認の方法に関し納税者は、転出届に記載された携帯電話番号への電話、納税者の親族への住所地照会、選管が保有する在外選挙人名簿の調査などを挙げたうえで、被告はこれらの方法により納税者の海外の住所を確認することができたと主張した。

これに対し裁判所は、納税者が主張する方法により被告が納税者の住所を確認することができる可能性があったと指摘する一方で、国外に転出した納税者に対する督促状の送達を公示送達で行う前に納税者が主張する方法による調査を行うことは通常必要とされる調査であったとまでは認められないと指摘。裁判所は、納税者の海外転出先の住所が明らかでないと判断し公示送達により行われた被告による督促状の送付・財産差押えは適法であると判断した。