• 修正申告は課税庁の調査を受けてなされた場合であっても、当該調査の手続上の違法があることのみを理由に申告は無効にならず。審判所が初めて判断。
  • 修正申告は更正や決定とは異なり調査が要件にあらず。

調査手続に違法があった場合、修正申告は無効になるのか──国税不服審判所はこの点で先例となる裁決事例を9月30日に公表した(平成27年3月26日裁決)。

この事案は、建設設計業を営む請求人が課税庁の調査を受けて所得税の修正申告書及び消費税等の期限後申告書を提出したが、課税庁が当該申告書等に基づき重加算税等の各賦課決定処分を行ったもの。これに対して請求人は、調査の対象期間を7年間分とする調査を行う旨の説明を受けていないなど、本件調査には違法があったことから修正申告及び期限後申告は無効であるとして各賦課決定処分の全部の取消しを求めたものである。このため、修正申告等が調査手続の違法により無効となるかが大きな争点となった。

審判所によると、国税通則法24条(更正)は、税務署長が調査により課税標準等又は税額等を更正する旨を規定し、同法25条(決定)は、税務署長が調査により課税標準等及び税額等を決定する旨を規定しているとした。一方、同法19条(修正申告)は、納税申告書を提出した者は更正があるまでは修正申告書を税務署長に提出でき、また、同法18条(期限後申告)は、提出期限後においても決定があるまでは納税申告書を税務署長に提出できるとした。

その上で審判所は、調査手続の違法と更正処分等との関係性について整理。具体的に、更正に基づき過少申告加算税の賦課決定処分が行われた場合及び決定に基づき無申告加算税の賦課決定処分が行われた場合には、当該更正及び決定は「調査により」行わなければならないことから、仮に調査手続に重大な違法があり調査が無いに等しいと評価された場合には、更正及び決定の取消事由となり、それらに基づき行われた賦課決定処分も取り消されるとした。

一方、修正申告及び期限後申告は調査の有無に関係なく、納税者が自己の意思により行うものであると指摘。前述の更正及び決定とは異なり調査が要件になっているものではないとした。したがって、修正申告又は期限後申告が課税庁の調査を受けてなされた場合であっても、調査の違法があることのみを理由として、その申告が無効になることはなく、当該申告による過少申告加算税又は無申告加算税の賦課決定処分が取り消されることはないと判断している。