• 不動産取得税の減額特例をめぐり、特例適用に必要なマンションの「戸数要件」が問題となった税務訴訟で納税者が逆転敗訴(最高裁平成28年12月19日第一小法廷判決)。
  • 最高裁、戸数要件(100戸以上)は複数棟ごとではなく1棟ごとに判断。本件各建物(6棟のマンション)の1棟ごとの戸数は100戸未満であるため特例の適用なし。

本件は、不動産業を営む納税者が東京都に対し、納税者が取得した本件土地上に建築した本件各建物(6棟のマンション)は「特例適用住宅」に該当すると主張して不動産取得税の還付を請求した事件である。

本件で問題となった減額特例は、敷地購入から4年以内に新築した共同住宅等の独立区画部分が「100戸以上」であることなどの要件を満たす場合には、その敷地に係る不動産取得税を軽減するというもの(地法附則10の2、地令附則6の17②)。

納税者は、地令附則6条の17第2項は共同住宅等が「1棟」であることを要件としていないため、土地上に建築された共同住宅等の総戸数が100戸以上であれば戸数要件を満たすと指摘し、本件各建物(6棟)の総戸数は405戸であるため減額特例の適用があると主張した。

これに対し原審の東京高裁は、「100戸以上」であるか否かは1棟ごとに判断すべきであるとした地裁判決(納税者敗訴)とは一転、1棟の共同住宅等ごとに判断されるべきことが法令の文言上明示されていない点などから複数棟の共同住宅等で「100戸以上」の場合にも減額特例の適用があると判断。納税者による還付請求を認める逆転判決を下していた(平成27年9月2日東京高裁判決)。

高裁判決で逆転敗訴した東京都の上告受理申立てに対し最高裁第一小法廷(木澤克之裁判長)は、「100戸以上」であるか否かは1棟ごとに判断すべきとしたうえで、本件各建物は1棟ごとの独立区画部分がいずれも100戸未満であって戸数要件を満たさないから減額特例の適用はないと判断した。判決理由のなかで木澤裁判長は、地令附則6条の17第2項の共同住宅等に関して定められた戸数要件を充足するか否かの判断は別段の定めがない限り、1棟の共同住宅等を単位とすべきであると指摘。この点について別異に解すべきことを定めた規定は設けられておらず、複数棟の共同住宅等を合わせて戸数要件を判断することを前提とした規定も存在しないことに照らすと、1棟の共同住宅等ごとに判断することが予定されているというべきであると指摘している。