• 株式交付信託は、「利益連動給与」にも「事前確定届出給与」にも該当。
  • 株式を付与されるまでの期間(待機期間)における業績や株価によってポイントが「変動するもの」は利益連動給与、「変動しないもの」は「事前確定届出給与」が原則に。
  • ただし、「変動しない」場合でも、「現金」で支給されるものは利益連動給与に該当。

平成29年度税制改正大綱を見ると、利益連動給与に新たに「業績連動指標を基礎として算定される数の市場価格のある株式を交付する給与で確定した数を限度とするもの」が加えられ、事前確定届出給与には新たに「所定の時期に確定した数の株式を交付する給与」が加えられているが、近年、役員向けに導入する企業が急増している株式交付信託(信託型株式報酬)はこのいずれにも該当し得ることが取材により確認されている。

そうなると、「利益連動給与」「事前確定届出給与」のいずれに該当するのかどうやって判定するのかという疑問がわいてくるが、結論から述べると、これは「業績や株価により変動するか」ということと、「支給形態(株式or現金)」によって決まってくることになる。

株式交付信託はポイントに応じて株式(場合によっては現金。この点については後述)を付与するものだが、このポイントには、株式を付与されるまでの期間(待機期間)における業績や株価によって変動するもの(ポイントの変動に伴い付与される株式数も変動)と、しないものがある。基本的な考え方としては、「変動するもの」が利益連動給与に該当し、「変動しないもの」が「事前確定届出給与」に該当することになる。

ただし、たとえ業績や株価によってポイントが「変動しない」としても、報酬が「現金」で支給されるものは利益連動給与に該当することになるので要注意だ。「“株式”交付信託」と言っても、信託内で株式を換金した上で「現金」で支給される場合がある。このように現金で支給される株式交付信託は、平成29年度税制改正で新たに事前確定届出給与に加えられた「所定の時期に確定した数の株式を交付する給与」とは言い難い。

したがって、業績や株価によってポイントが変動せず、かつ現金で支給される株式交付信託が損金算入されるためには、架空の株式を用いた現金によるインセンティブ報酬であるファントムストックと同様に、利益連動給与の要件を満たす必要がある。