- 最高裁は平成29年2月28日、本件歩道状空地が私道供用宅地(評価通達24)に該当しないと判断した原審判決を破棄し、原審に差戻し。
- 最高裁、宅地の位置関係・形状等や利用状況、道路以外の用途への転用の難易等に照らし減額の要否及び程度を検討すべきと指摘。
私道の用に供されている宅地(以下「私道供用宅地」)の相続税評価は、路線価などの30%で評価されるが、その私道が不特定多数の者の通行の用に供されているときはゼロ評価とされている(評価通達24)。
本件の争点は、納税者が相続により取得した歩道状空地が私道供用宅地(評価通達24)に該当するか否かという点。
本件歩道状空地は、共同住宅(複数棟のマンション)の敷地(公道に隣接)の一部で、その公道沿いにインターロッキング舗装が施された幅員2mの空地である(共同住宅敷地の外延部に設置)。地方自治体からの開発指導要綱等に基づく指導により整備されたもので、外観上、車道脇の歩道として居住者等以外の第三者も利用可能な状態となっていた(小学校の通学路にも指定)。本件歩道状空地が私道供用宅地に該当すると主張した納税者に対し原審の東京高裁は、評価通達24にいう私道とはその利用に建築基準法上における道路内の建築制限や私道の変更等の制限のような制約があるものを指すと解釈。本件歩道状空地については建築基準法等の法令上の制約などがある土地でないことから評価通達24にいう私道供用宅地には該当しないと判断していた(東京高裁平成28年1月13日判決)。
高裁判決で敗訴した納税者の上告受理申立てに対し最高裁第三小法廷(山﨑敏充裁判長)は、私道供用宅地は第三者の通行の用に供され、所有者が自己の意思により自由に処分等をすることに制約があることによりその客観的交換価値(時価)が低下する場合に、そのような制約のない宅地と比較して相続税評価を減額されるべきものということができると指摘。相続税評価における減額の要否及び程度については、建築基準法等の法令上の制約の有無のみならず、私道供用宅地の位置関係・形状等や道路としての利用状況、これらを踏まえた道路以外の用途への転用の難易等に照らし、客観的交換価値に低下が認められるか否か、また、その程度がどの程度かを考慮して決定する必要があるとした。そのうえで最高裁は、この点について具体的な検討をすることなく減額をする必要がないとした原審の判断には相続税法22条の解釈を誤った違法があると指摘し、さらに審理を尽くさせるため本件を原審に差し戻した。