• 被相続人の家族名義の預貯金が相続財産に含まれるか否かなどが争われた裁決で国税不服審判所が課税処分を一部取消し(平成28年11月8日裁決・関裁(諸)28-16)。
  • 一部の家族名義預金の出損者は被相続人ではないこと、被相続人等が管理運用していた事実が認められないことなどを踏まえ相続財産には含まれないと判断。

相続税の税務調査のなかで、家族名義の預貯金が被相続人の相続財産に含まれるか否かが問題となりがちだ。本件では被相続人の家族名義預金が被相続人の相続財産に含まれるか否かが問題となった。

本件の家族名義預金は15の預金口座で、その総額は約4,300万円であった。これに対し税務署は、被相続人が管理運用していたこと、被相続人の事業収入から設定されたこと、過去に贈与されたものではないことから相続財産に含まれると判断。請求人(被相続人の妻である)に対し課税処分を行った。これを不服とした請求人は、家族名義預金は被相続人からの贈与資金及び家族の自己資金により設定されたものであると主張し、家族名義預金は相続財産には含まれないとして争った。

審判所は、被相続人以外の者の名義である預貯金が相続開始時において被相続人に帰属するものであったか否かについては、預貯金の出損者、預貯金の管理及び運用の状況、預貯金から生ずる利益の帰属者、被相続人と預貯金の名義人及び預貯金の管理運用者との関係、預貯金の名義人がその名義を有することになった経緯等を総合考慮して判断するのが相当であるとした。

そして、家族名義預金15口座のうちの8口座(約3,730万円)については、原資は被相続人が出損したものと認められること、被相続人の財産を管理してきた請求人が一貫して管理運用してきたこと、原資が被相続人からの贈与資金であると認めることができないことから、被相続人の相続財産に含まれると判断した。

一方では、家族名義預金15口座のうち6口座(約470万円)については、被相続人の長男夫婦に帰属する財産(預金口座)から引き出された金員を原資として設定されていることなどから、被相続人の相続財産と認めることはできないと判断。また、被相続人の孫名義の1口座(約100万円)については、被相続人の長男が出損者であり、被相続人又は請求人が管理運用していた事実を認める証拠がないことから、相続財産であるとは認めることはできないと判断したうえで、課税処分の一部を取り消している。