- 審判所、消費税法上非課税とされる住宅の貸付けには、転貸借のみならず再転貸借される場合も含むとの初めての判断を示す(平成28年9月7日、棄却)。
- 住宅の貸付けが非課税とされる趣旨は、住宅の貸付けを行う事業者が賃借人に対して消費税相当額を転嫁しないことにより住宅賃借人を政策的に保護することと指摘。
住宅用建物を賃貸する場合、賃借人が自ら賃貸しない場合であっても、賃貸借契約において賃借人が住宅として「転貸」することが契約書において明らかであれば、非課税とされるとの取扱いがなされている(消基通6-13-7)。今回の裁決事例では「再転貸」についても同じく非課税となるかが論点となっている。
請求人は建物の賃貸借取引について、課税資産の譲渡等に該当するとして当該建物に係る消費税等の還付を求める旨の確定申告を行ったが、原処分が当該賃貸借取引は消費税が課されない取引であるとして更正処分等を行ったものである。当該賃貸借取引では、請求人は賃貸住宅事業を営む事業者(F社)と自己の建物を賃貸する契約を締結しており、さらにF社はL社と転貸借契約を結んでいる。当該転貸借契約書には建物の居室を住居専用として使用する旨などが記載されていた。
請求人は、消費税法基本通達6-13-7(転貸する場合の取扱い)が想定するのは転貸借取引のみであると主張。本件賃貸借取引は、契約内容からすれば建物が再転貸借されること及び建物に実際に居住することができない法人が再転貸人になることが想定されているから、本件通達適用の前提を欠いているなどとした。
審判所は、住宅の貸付けが非課税取引とされている趣旨は、住宅の貸付けを行う事業者が賃借人に対し、消費税相当額を転嫁しないことにより、住宅賃借人を政策的に保護することにあるものと解されると指摘。本件通達は、住宅用の建物の賃貸借に係る契約において賃借人が自ら使用しない場合であっても、賃借人が「住宅として転貸することが契約書その他において明らかな場合」には、当該住宅用の建物の賃貸借を非課税取引と取り扱う旨を定めたものであるとの解釈を示した。その上で本件をみると、賃借人である賃貸住宅事業を営む事業者が本件建物を住宅(人の居住の用に供する家屋等)として転貸することが賃貸借契約書等で明らかであるため、本件賃貸借取引は、消費税法別表第一第13号に規定する「住宅の貸付け」に該当し、その全額が非課税取引になるとの判断を示した。