• 平成28年4月から新たな国税不服申立制度がスタート。再調査の請求を経ずに行われた直接審査請求は、前年度から約4倍増の1,473件に。
  • 直接審査請求が急増する一方で、再調査の請求(改正前の異議申立て)の件数は前年度から47.5%減少。
  • 国側敗訴割合は「4.5%」で前年度より3.9ポイント減少。平成に入ってから最も低い数値に。

国税庁は6月20日、平成28年度(平成28年4月~平成29年3月)における再調査の請求・審査請求・訴訟の概要を公表した。通則法の改正により、平成28年4月1日以降の課税処分等から再調査の請求(改正前の異議申立て)を経ることなく、国税不服審判所に対して直接審査請求をすることができるようになったところ、この改正の影響により直接審査請求がなされた事案が急増していることが明らかとなった。

具体的にみると、平成28年度における直接審査請求の件数は1,473件で、前年度(368件)と比べて4倍近く増加した。

審査請求の全件数は2,488件(請求人ベースで500人程度)であることから、全件数に占める直接審査請求の割合は60%近くになった格好だ(前年度は約18%)。

なお、青色申告書に係る更正等については改正前も直接審査請求をすることが可能であったが、審判所によると、平成28年度の直接審査請求の件数のうちの80%近くが改正により新たに可能となった直接審査請求であった。

再調査の請求を経ない直接審査請求の件数が急増する一方で、再調査の請求の件数は大きく減少する結果となった。

具体的にみると、平成28年度の再調査の請求の件数は1,674件で、前年度(3,191件)から47.5%減少した。この件数は審査請求の件数と同様に、税目・年分ごとにカウントされているが、請求人ベースでみても平成28年度の請求人数は約500件で前年度(1,000件弱)から半減している。

また、平成28年度における訴訟の概要をみると、訴訟の発生件数は230件で、終結件数は245件であった。発生件数は5年連続の減少で、終結件数も4年連続で減少している。発生及び終結件数は、平成に入ってから最も低い数値であった。

終結件数のうち国側が全部又は一部敗訴した事件は11件(一部敗訴5件、全部敗訴6件)で、国側敗訴割合は4.5%(前年度8.4%)であった。国側敗訴割合及び敗訴件数も平成に入ってから最も低い数値だ。なお、敗訴件数11件の税目は、所得税4件、法人税7件で、審級別でみると、第1審7件、控訴審3件、上告審1件であった。