- 勤務先法人からの給与とは別に調理場委託料を受領していた請求人(ホテルの料理長)の業務をめぐり、請求人による調理場運営業務は消費税法上の「事業」に該当すると判断(平成29年2月9日裁決・関裁(諸)平28第28号)。
- 請求人による調理場運営業務は勤務先法人との雇用契約に基づく料理長としての業務には含まれず。
請求人は、本件法人との間で雇用契約を締結し、本件法人が経営するホテルの調理場で料理長として勤務していた。請求人の業務は、調理場の料理長としてメニューの考案、材料発注及び調理などのほか、調理場で勤務する請求人以外の各料理人を確保し、給与の支給や出勤状況の管理等を行うというもの。請求人は、本件法人から給与とは別に「調理場委託料」を毎月受領し、各料理人ごとの給与額等を計算したうえで各料理人に対して調理場委託料から給与を渡していた。原処分庁は、請求人が本件法人から料理人を雇用して料理場で調理等に従事させる業務を委託され、その対価を受け取っていることから請求人は個人事業者(消法2①三)に該当すると判断し、消費税の決定処分等を行った。これを不服とした請求人は、本件法人との雇用契約に基づき本件法人から指示を受けて従業員の立場で業務を行ったにすぎず、その業務は消費税法上の「事業」には当たらないなどと主張し、決定処分等の取消しを求めた。
これに対し審判所は、まず、消費税法上の事業とは、対価を得て行われる資産の譲渡及び貸付け並びに役務の提供を独立の立場で、反復、継続して行うことをいうと解釈したうえで、請求人が行っていた業務の全てが雇用契約に基づくものであるのかを検討。審判所は、①本件法人は各料理人の採否の決定に関与していないこと、②請求人は各料理人を採用するに当たり人材派遣会社を利用することがあったこと、③本件法人は各料理人の出勤状況について請求人から報告を受けていなかったこと、④本件法人は各料理人の給与の計算等に関し請求人に具体的な指示をしていなかったことなどを認定。これを踏まえ審判所は、請求人は同人の判断で各料理人を採用して各料理人を指揮監督しながら本件調理場における業務を行っていたものということができ、請求人の業務の全てが本件法人との雇用契約に基づく料理長としての業務に包含されるものとは評価できないとした。そのうえで審判所は、請求人は独立の立場で、反復、継続して各料理人を雇って本件調理場を運営していたと認定し、請求人は消費税法上の個人事業者であると判断した。