• 平成28事務年度の所得税調査、短期間(平均3.0日)で実地調査を行う着眼調査が18.1%増加。実地調査件数は6.4%増加の約7万件に。
  • 富裕層に対する調査では、調査件数自体は微減(-4.3%)も、追徴税額は増加(+5.8%)。外国法人からの配当等や利子等が無申告だった事例も。
  • 国外転出時課税は10件程度の調査。

国税庁が10月31日に公表した「平成28事務年度における所得税及び消費税調査等の状況」によると、所得税の実地調査件数は70,238件で前事務年度(66,016件)から6.4%増加したことがわかった。

実地調査のうち「特別調査・一般調査」(高額・悪質な不正計算が見込まれる者を対象)は49,012件で前事務年度から2.0%増加、「着眼調査」(申告漏れ所得等の把握を実地により短期間で行う調査)は21,226件で前事務年度から18.1%増加する一方で、「簡易な接触」(計算誤りなどがある申告を是正するなどの接触)は576,906件で前事務年度から1.3%減少している。結果として、所得税調査等の件数自体は前事務年度から0.5%減少の647,144件となり、過去5年間で最も低い件数となった。なお、所得税の実地調査率は前年同様「1.1%」であった。

国税当局が重点課題の1つとする「富裕層」に対する調査状況をみると、平成28事務年度の調査件数は4,188件(前事務年度比-4.3%)、申告漏れ等の非違件数は3,406件(同-2.1%)で、追徴税額は127億円(同+5.8%)であった。

国税庁によると、この調査結果にはいわゆる超富裕層PTが関わったものも含まれている。また、同庁によると、富裕層・海外投資などに関する調査事例として、①外国法人からの配当等があったにもかかわらず意図的に申告していなかった事例、②自動的情報交換資料を端緒に多額の利子などの申告漏れを把握した事例、③海外不動産の譲渡所得を申告から除外していた事例があったようだ。

平成28事務年度の譲渡所得の調査等の状況をみると、調査等の件数は26,872件であった。また、国税庁によると、国外転出時課税に関して平成28事務年度は10件程度の税務調査を行った。

消費税の調査状況をみると、実地調査の件数は36,639件(前事務年度比+5.1%)で、申告漏れ等の非違件数は29,544件(同+4.3%)であった。国税庁によると、消費税無申告者に対する調査件数は8,816件(同+8.6%)で統計開始以来最も高い件数となった。