- 平成30年度税制改正で、一般社団法人等を利用した相続税節税スキームを封じ込め。
- 非営利型以外の一般社団法人及び一般財団法人について、同族関係者が役員の過半数を占める場合には、その役員死亡により法人財産を対象とした相続税を法人に課税。
平成20年の公益法人制度改革により、一般社団法人が登記のみで設立できることとなった。これにより一般社団法人等の設立が増加し、平成29年8月時点(主税局推計)で一般社団法人及び一般財団法人は約5万1千法人、うち非営利型は約2万7千法人、非営利型以外は約2万4千法人となっている。非営利型の一般社団法人等は、残余財産の分配が不可、または会費の定めがあり会員の共通の利益を図る活動をしている。また、収益事業以外は法人税が非課税である。さらに、理事のうち親族割合が3分の1以下であることが要件とされている。これに対し非営利型以外の一般社団法人等は、残余財産の分配が可能で、事業内容に制限がなく、株式会社と同様に法人税が課税される。また、理事のうち親族割合に関する制限は設けられていない。
今回問題となった一般社団法人等を利用した節税策は、相続税の対象となる資産を非営利型以外の一般社団法人等に移転することで、移転した資産に係る相続税を逃れるというもの。一般社団法人等には資本持分がないことから、一般社団法人の理事長に相続が発生した場合に(理事長は子が引継ぎ)、移転した資産に係る相続税が課税されないことなどを利用したものである。
現行制度では、個人から一般社団法人等に対する贈与について親族が役員のうち3分の1を超えるなどの要件を満たせば、一般社団法人等に贈与税(遺贈の場合は相続税)が課税される(相法66④、相令33③)。平成30年度税制改正では、この規定にかかわらず一般社団法人利用の租税回避が広がっている現状を踏まえ、個人から一般社団法人等への贈与時の課税について親族が役員のうち3分の1超などの要件のいずれかを満たせば一般社団法人に贈与税等が課税されるとの現行規定の明確化を行う。
さらに、同族関係者が役員の過半数を占めている一般社団法人等について、その同族役員(死亡前5年間に退任した者を含む)の1人が死亡した場合にその法人の財産(同族役員の数で等分)を対象にその法人に相続税を課税する。この改正は、平成30年4月1日以後の役員の死亡により適用されるが、既存法人については平成33年(2021年)4月1日以後の役員の死亡により適用される。