- 審判所、翌事業年度に請求があった工事費用の一部について請負代金が益金に算入される当事業年度で損金(完成工事原価)とすべきと判断(平成29年10月4日裁決・関裁(法・諸)平29第10号)。
- 法22条4項等踏まえ原価は費用収益対応の原則を採るのが公正妥当と認められる会計処理基準と解釈。
法人税の申告では、費用の損金算入事業年度がいつであるかという点がしばしば問題となる。今回紹介する裁決事例は、請負業等を営む請求人(6月決算法人)が請け負った公共工事(以下「本件工事」)に係る一部の費用を完成工事原価として平成27年6月期の損金に算入していなかったことに対して、国税不服審判所が費用収益対応の原則の観点から平成27年6月期で損金に算入すべきと判断したものである。
本件工事は、全4期にわたる駅周辺の街路整備工事の第2期工事であり、具体的には本件工事に先行した第1期工事の施行区域を取り囲む歩行者用通路のタイル設置工事を主たる工事内容とするものであったが、契約変更により本件工事の引渡し(平成27年3月31日)後120日間にわたり第3期工事の予定区域を囲うためにバリケードを設置することが追加された。請求人は、平成27年7月1日から同月31日までの期間に係るバリケード賃借料を本件工事に係る完成工事原価として平成27年6月期の損金に算入していなかった。
国税不服審判所は、法人税法22条4項等を踏まえると、原価は収益との個別対応の原則(費用収益対応の原則)を採るのが公正妥当と認められる会計処理の基準と解されるとした。そして本件について審判所は、請求人が設置したバリケードの設置期間に係る使用料に対応する請負代金の額が本件工事の引渡日の属する平成27年6月期の益金に算入されることからすると、請負契約により定められた期間(平成27年4月1日から7月29日までの120日間)に係るバリケード賃借料は平成27年6月期の損金に算入すべきであると指摘。平成27年7月31日付で請求人に対して請求があった同年7月1日から同月31日までの期間に係るバリケード賃借料のうち、7月1日から同月29日までの期間に係るバリケード賃借料は平成27年6月期の損金に算入すべきと判断した。ただ一方で審判所は、請負代金は平成27年6月期の課税期間の課税資産の譲渡等の対価に算入される一方で、前述の平成27年7月1日から同月29日までの賃借料は平成27年6月期の課税期間に係るものではないから平成27年6月期で仕入税額控除はできないと判断している。