- 審判所、延納許可に係る担保不動産について国税当局による抵当権の設定登記後に担保不動産上に築造された請求人の建物に対する差押処分(徴収法47①一)を違法と判断(平成29年10月16日裁決・関裁(諸)平29第12号)。
本件の発端は、請求人が相続税の延納許可をした際に提供した担保不動産について、国税当局が抵当権設定登記をした後に請求人が担保不動産である土地上に建物(以下「本件物置」)を築造したことに始まる。国税当局は、請求人が延納許可された国税を納期限までに完納しなかったことから延納許可を取り消したうえで、滞納国税を徴収するために通則法52条1項等に基づき担保不動産について担保物処分のための差押え等をした。また、徴収法47条1項1号等に基づき本件物置を差し押さえた(以下「本件差押処分」)。
これを不服とした請求人は、担保不動産の固定資産税評価額は滞納国税額を明らかに超えていることから担保不動産を差し押さえてその処分代金を充てれば徴収不足は生じないと指摘し、本件差押処分は「なお不足があると認めるとき」(通則法52④)になされたものではないから違法であると主張した。これに対し原処分庁は、確かに「なお不足があると認めるとき」になされたものではないものの、請求人が本件物置を築造した行為は滞納処分の執行を妨害するものと評価し得るもので、滞納国税の徴収のためには請求人による滞納処分の執行の妨害を除去する必要があると指摘。徴収法上は民法389条1項(抵当権設定後に抵当地に築造された建物を土地とともに競売することができる旨を規定)のような規定は存在しないものの、同項の規定に照らして本件物置を担保処分不動産と一括して公売に付すことが認められるべきと解釈すべきであると主張した。
これに対し審判所は、国税の担保の処分で民法389条1項が適用される余地はあるとしても、抵当権設定後に抵当地に築造された建物を抵当地とともに公売するための差押えは担保権の実行である以上、通則法52条1項に基づく担保物処分の差押えとして行うものであり、徴収法47条1項1号に基づく滞納処分の執行として行うことはできないとしたうえで、原処分庁の主張は採用できないと判断した。そして審判所は、本件差押処分時に担保不動産の処分見込額が滞納国税額を上回ることは明らかであるから、本件差押処分は「なお不足があると認めるとき」になされたものとは認められないため、徴収法47条1項1号に基づきなされた本件差押処分は違法と判断した。