• 審判所、株主の滞納国税を徴収するために税務当局が同族会社(請求人)に対して行った第二次納税義務の納付告知処分を違法と判断(平成29年12月13日裁決・名裁(諸)平29第7号)。
  • 同族会社の資産負債は客観的時価を標準として計算すべきとしたうえで、簿価純資産により限度額を算出した納付告知処分を取り消す。

本件は、同族会社である請求人の株主の滞納国税について、国税徴収法35条の「同族会社の第二次納税義務」により税務当局が請求人に対して第二次納税義務を追及した事案である。

同族会社に対する第二次納税義務の限度額について国税徴収法基本通達第35条関係13では、同族会社の資産及び負債の計算は原則として納付通知書を発する日の現況によるが、特に徴収上支障がない限り、その日の直前の決算期の貸借対照表等を参考として行っても差し支えない旨が規定されている。本件で税務当局は、第二次納税義務の納付告知処分直前の貸借対照表等を参考に資産と負債の額を求めて純資産額(簿価ベース)を算出したうえで第二次納税義務の限度額を算出していた。これを不服とした請求人は、税務当局による限度額は貸借対照表に計上された時価との乖離が大きい簿価純資産を基礎として算出した点が相当ではないと指摘し、時価ベースで債務超過状態の請求人に対する第二次納税義務の納付告知処分は違法であると主張した。

審判所は、国税徴収法基本通達第35条関係13が特に徴収上支障がない場合には直前の決算期の貸借対照表等を参考にすることを認めることで納付通知書を発した日の時価評価を簡便に行えるようにすることを企図する一方で、飽くまで「参考」とすることができるにとどめているのは「当該会社の資産の総額から負債の総額を控除した額」(徴収法35②)は同族会社に対し納付通知書を発する時の客観的な時価を標準として計算されるべきものであることを踏まえたものと解されるとした。そして審判所は、直前の決算期の貸借対照表等の勘定科目に額面どおりの経済的価値があるとはいい難い資産などが含まれている場合には、貸借対照表等の金額に一定の修正を加えて客観的な時価を算定するのが相当であるとした。本件について審判所は、請求人は債務超過の状態に陥っており、その株式の価額は零円であるから、税務当局による限度額は請求人の株式の適正な時価を反映して算出された適法なものとはいえないとしたうえで、請求人は第二次納税義務(徴収法35)を負うことはないと結論付けた。